障害の社会モデルとは何か
まず、「ディスアビリティ」とは、単なる不利益(ディスアドバンテージ)ではなく、「障害者とされる人々に特有の不利益」を指すと言われている。
では、この「ディスアビリティ」と「インペアメント」(通常「機能損傷」とされる)の関係はどうなっているのか。
① 星加良司は、「インペアメント」は、ある人々が特に被る(質量的に)他とは区別されるような不利益としての「障害(ディスアビリティ)」について、その責任を当人に帰すための根拠として否定的に評価されるような身体的特性である、としている。これは「インペアメント」が「ディスアビリティ」によって構築されるという意味で、構築主義的な考え方だと言えるだろう。
② 他方、「インペアメント」は医学的・生理学的に「心身の性質」あるいは「機能損傷」として同定することができ、それと社会環境との相互作用で生ずる「インペアメントを持つ人に特有の不利益」が「障害(ディスアビリティ)」である、という見方がある。
①では、インペアメントはディスアビリティによって定義されるので、「ディスアビリティ」の定義が問題になる。星加の議論では、ディスアビリティは「不利益」の質量によって定義されているが、不利益の質量の解釈の基準が問題になる。
②は、ディスアビリティとはインペアメントと社会障壁の相互作用の結果であるという考え方なので、インペアメントを社会障壁やディスアビリティから独立して定義する必要がある。「インペアメント」は非社会的・医学的(あるいは「本質主義」的)に定義されるが、この医学的な基準が問題になる。
また、TerziやBarclayは、social modelを踏まえつつケイパビリティ・アプローチから、インペアメントとディスアビリティについて論じている(両者の議論には微妙な差異がある)。